今回ご紹介するのは、マンションのベランダで起きる怪異です。空き室の多いマンションに入居した独身女性の身に起きた恐怖……それはベランダから覗く人の顔だった!
東京都A市の不動産管理会社に頼まれて、市内にある某マンションへお祓いに行きました。それは築二十年、十階建ての割りと大きな建物でした。私を現地に案内してくれた会社の担当者によると、主にベランダで気味の悪いことが続出し、かつて六十世帯ほど入っていた部屋の三分の一近くが空き部屋になってしまっているというのです。また担当者は、直近で幽霊が出ると訴えてきた女性の話も教えてくれました。その女性の名は仮にA子さんとさせていただきます。
独身OLのA子さんが問題のマンションに入居したのは、去年の初秋。日当たりの良い最上階の角部屋に惹かれて賃貸契約を結び、当初はとても快適に生活していたそうです。空き室が多いことは気になっていたものの、防犯を含む管理体制はきちんとしていたので、女の一人暮らしでもそれほど心配はしませんでした。そんなAさんが最初の怪異に見舞われたのは、引っ越してから一ヶ月ほど過ぎた頃でした……。
その日は日曜日。溜まっていた家事を午前中に片付けたA子さんは、昼過ぎからはリビングでゆっくりと寛いでいました。しばらくはテレビ番組を見ていたのですが、やがてそれに飽きてスイッチを消した瞬間、サッシを開け放っていたベランダの方から、何かが落ちてきたようなドサッという音が響き渡りました。干していた洗濯物が落ちたのかな?しかし、それにしてはあまりに大きな音だった。首を傾げながらベランダへ出てみたところ、欄干際の片隅に目を疑うものが……。それは、肘の部分で切断された人間の手首でした!細くて華奢な肉づき。五指の爪に赤いマニキュアが塗られたそれは、明らかに女の肉体の一部であると思われました。悲鳴を上げながら、室内へ逃げ込んだA子さん。慌ててサッシとカーテンを閉め、しばらくはガタガタと震えていましたが、やがて少しだけ落ち着きを取り戻し、勇気を奮ってもう一度ベランダを見たそうです。しかし、そのときはすでに手首は消えていました。一度だけなら目の錯覚で済ますこともできるのですが、その日以降、A子さんは落ちてくる手首を頻繁に見るようになってしまいました。挙げ句の果てには、真夜中にベランダの天井付近から逆さまに顔を出して、室内を覗き込んでいる髪の長い女とまともに目を合わせてしまい、その場で失神してしまったのでした。
翌日、本人から解約したい旨の連絡が管理会社に入り、事の次第が明らかになりました。「同じような体験をしている人が、今まで数え切れないほどいるんです。一体、どういうことなんでしょう」。担当者によれば、過去にマンション内での投身自殺や死傷事故、事件の類が起きたことは一度もないとのこと。そこで建物の上から下までくまなく調べて霊視したところ、マンションのすぐ近くを通っている霊道(霊波動のエネルギーの流れ)が関係していると推察されました。しかし断定するにはもう少し時間が必要で、まだ完全な解決には至っていません
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