電化製品や家具一式が備え付けで揃っており、身ひとつで引っ越してすぐに住めるという触れ込みのアパート。これは便利だ!と即決で引っ越した、ある単身赴任の男性の身に起きた心霊現象とは?
所有する賃貸物件に間借り人が居着かない、また入ってもすぐに出て行ってしまう…。何とかして欲しいと頼み込まれ、茨城のM市内へ赴きました。当日、私を待っていたのは上品な雰囲気の老婦人でした。問題の物件は亡くなった旦那さんが遺産として残してくれた土地に建てた三階建ての鉄筋アパートとのことで、その家賃収入が途絶えるのは死活問題だと嘆いておられました。「どうしていきなり私のような者に相談しようと思われたのですか?」「それは直接、本人から訊いてください」「本人?」「つい最近、引っ越してこられた人です。あの人のおかげで下宿人が居着かない理由が分かったんです」。
そして、アパートの住人であるその中年男性と会うことになりました。この秋、東京から単身赴任で移り住んで来たばかりの方だったのですが、心なしかやつれた顔付きでした。「ここから会社までバス一本で通えてすごく便利なんです。家賃も安くて会社から支給される補助金額に納まるし。これこそ求めていた物件だと思って、不動産屋から紹介された時に迷わず決めました」しかし、いざ住み始めてすぐ、留守中の室内でおかしなことが起きるようになったそうです。例えば衣類や生活用品など、部屋にあるはずの物品が頻繁になくなる。テレビのスイッチが入らないのでどうしたのかと調べたら、いつの間にかコンセントが抜けていた。あるいは物がなくなるのとは逆に、身に覚えのない品が床に転がっていることも何度かあった、と。「ほら、これがそうです」差し出されたのは、ビー玉や水鉄砲など子供の玩具が詰め込まれた箱でした。「夜、帰って来て灯りを点けると、廊下や部屋の床にこういうもんがコロンと転がっているわけです」。
「試しにこの部屋に隠しカメラを仕込んでみたんです。じつは私、電気関係の技術屋なもので」「それはいつのことですか?」「つい二日前です」そう言うと彼はおもむろにテーブル上のノートパソコンを開き、撮影された映像を見せてくれました。そこには白昼、無人となった室内に突然、数人の子供たちが現れる様子が映っていました。彼らは何もない空間から出現し、台所からリビングを駆け回ってひとしきり遊ぶと、また忽然と消えてしまったのです。「できれば私、支社の任期が終わるまでこのアパートに住みたいんですよ。大家さんもとても良い方で、死んだお袋にも似てまして、放っておけないというか。でも、このままじゃ…ねぇ」言葉を濁す男性とその横で沈痛な面持ちを浮かべる老婦人の姿を見て、何も言えなくなりました。
その後、男性の部屋とアパート全体のお祓いをさせていただき、これらの心霊現象は止みました。しかし、まだ根本的な解決には至っていません。実は霊視したところ、建物が建つ地中に毀損された水子地蔵が何体も埋まっていることが分かったのです。なぜ、そんな物が埋まっているのか理由は不明ですが、掘り返して供養しない限り、いずれまた子供たちは悪戯を始めるでしょう。
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